キャプテン・ハーロックとガッチャマン

すみません、キャプテン・ハーロックを観て来ました

もはやこの世代の人間の責任感とも言うべき感情に駆られまして。
何となく思い立って、映画批評など書いてみようかと思いました。
たまたまちょっと前に「ガッチャマン」も観て来たので、その比較において語ってみたいと思います。

僕が観に行ったのは20:20からのレイトショーでしたが、
さすがに公開初日だけあってか、結構な数のおっさん(自分も含めて)・おばさんが入っていました。
ちなみに3D上映でしたが、これが大正解。

基本的にネタバレなしでいきます。
ただまあ、基本的にネタバレしても問題ない映画だと思います。

総評

いやー良かったです。良かったですよ、ハーロック
いろいろとツッコミどころはあるけれども、この映画に与えられた役割という意味では完璧すぎる出来だと思いました。原作ファンとしても十分満足できる出来でしたし、日本人にこんなものが作れるんだという事実に感動しました。
あちこちで言われていますが、ガッチャマンが酷かっただけに嬉しかったです。

制作費

キャプテン・ハーロックの総制作費は27億5000万円(!)と言われています。
凄いですね。マーケティングのことは良く分かりませんが、今このテーマでそこまで突っ込むのは凄いなーと感じます。
ちなみに、ちょっと前の実写版「SPACE BATTLESHIP YAMATO」の制作費が20億円で、興業収入が41億円だそうです。
かつての人気コンテンツとはいえヤマトよりかなりマイナーな感のあるハーロックに、そこまで制作費を突っ込む判断はかなり思い切ったものだと思います。ただ、それだけ価値のある内容に仕上がっている、と個人的には思います。
一方のガッチャマンは、総制作費80億円なんていう話が出回っていますが、これはマユツバですよね。実際のところは6〜8億円というところらしいです。ただ実際、ガッチャマンも「お金かかってる感」はあるのですが、それは残念ながら「無駄に金かかってる感」でしかなかったです。

設定・脚本

これは最近のトレンドなのか、ハーロックガッチャマンともに所謂「リブート」という手法を用いています。原作の設定やメカ、ディティール等を踏襲しつつ、物語としては一旦白紙の状態から組み立て直す、というものです。まだ観てないですが、新スーパーマン「マン・オブ・スティール」もそういう事みたいですね。
ガッチャマンはとにかく脚本が酷かった。台無しです。昔のアニメなので、設定が非現実的で無理や矛盾があるのは批判すること自体に意味が無いと思っています。ただガッチャマンの場合はそういうレベルの話ではなかったです。イラっとするセリフも随所にちりばめられていました。このあたりについてはネット上でも散々語られていますので、ここで細かく語る必要もないでしょう。原作の方がまだまともだったと言っていいと思います。
キャプテン・ハーロックについても色々設定上の無理があり、ストーリーも結構苦しいです。が、そこはさすがに福井晴敏さん、所々に唸らされる設定もあり、何とか纏めたという感じでしょうか。ただこの映画に関して言えば、脚本に関してはそれなりの形と奥行きを与えられていて、世界観を表現できれば良いのだと思います。「パシフィック・リム」と同じ理由において。

映像表現

これこそが、この手の映画(アニメの実写化)に最も求められているものだと思っています。
そしてこの点において、キャプテン・ハーロックは「見事」の一言に尽きます。今まで日本のCG技術はどうしてもハリウッドに敵わない感じがありましたが、この映画はハリウッド映画と初めて真正面から渡り合える出来だと感じました。
特筆すべきは、「生身の人間をCGで表現することに初めて成功している」ことです。
有名な所では、昔「ファイナル・ファンタジー」がこれをやろうとして大コケしていますね。
ピクサーやディズニーはこの辺りを良く分かっていて(?)、CG映画は全てデフォルメしたキャラクターで構成していますよね。学術的には「不気味の谷」と言われる感覚があって、リアルな映像に近づくと、逆に現実との微妙なズレが気になって違和感を感じます。あまり有名ではないですが、数年前にロバート・ゼメキス監督の「ベオウルフ/呪われし勇者」という映画がこの技術に挑戦しています。映像の完成度という意味ではかなり凄いとは思いましたが、正に映画全体をこの「不気味さ」が覆っていました。
格闘ゲーム等では既に美しい3Dキャラがいろいろ出て来ていますが、動きが限定されているのと、セリフを話したり、細かい表情を使い分けたりするケースはあまりなかったのではと思います。「龍が如く」ってやったことないんですけど、どうなんですかね。
キャプテン・ハーロックでは、遂にこの、実物の人間を表現することに成功したと言ってもいいのでは無いでしょうか。漫画・アニメに登場したキャラクターの処理も絶妙だったと思いますし、ヒロインの美しさにも素直に引き込まれました。また、アルカディア号の砲台やエンジンの表現、特に金属がすり減っている感じの表現が見事でした。3Dとの相性も抜群でしたね。
あと、CGで人間を表現するメリットとして、キャラクターの「子供時代」をそのまま表現できるという事実にも気付かされました。

メカデザイン・衣装デザイン

個人的には「ガッチャマン」のスーツは原作の設定を生かしつつ、なかなかカッコ良く纏めたな、と思っています。ただ、それ以外はかなりちぐはぐな印象を受けました。
一方、ハーロックは細部に渡って全ての設定に命が吹き込まれている印象です。例えば敵の司令官は物語の鍵となる事故の結果足が不自由になり、ハイテクな車椅子みたいなのに乗っているのですが、それすらもやたらとカッコ良かったです。あとは乗組員が着ている宇宙服とか、敵の戦艦「オケアノス」とかもシビれましたね。一部中世をモチーフにしたような都市のデザインも美しかったです。

原作へのレスペクト

アルカディア号はもちろんかっこ良かったですし、船内の雰囲気とか、ハーロックの肩に乗っている「トリさん」とか、ケイ/ミーメ/ヤッタラン、そして大山トチロー。
原作に登場する設定やキャラクター達が見事に再現されていました。
「SPACE BATTLESHIP YAMATO」では、敢えて生身のデスラーを登場させないことでうまく「逃げて」いましたが(それはそれで正解だったと思っています)、今回は全てを真正面からやり遂げていると言えると思います。恐らく原作ファンも文句はないのではないでしょうか。
(ただ一部、小栗旬三浦春馬といった声優陣には批判もあるみたいですが。。)

そしてそして、エンドロールが終わった後に浮かび上がった、松本先生直筆(?)のハーロックアルカディア号。
これを見せられたら原作ファンは黙るしかないでしょう。


というわけで、オタクキャラ全開で書いてしまいましたが、是非観に行って欲しいです、「キャプテン・ハーロック」。
ヴェネツィア国際映画祭でも好評だったようですし、海外からの評判が楽しみです。